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「行ってきます」が言えなくなった日

「行ってきます」
「いってらっしゃい」
「ただいま」
「お帰りなさい」

私たちは毎日、当たり前のように
この言葉を交わしています。

でも、この4つの言葉は、
ただの挨拶ではありません。

「行ってきます」漢字で書けば、「行って、来ます」

つまり、「行くけれど、必ず帰ってきます」
という約束の言葉です。

そして送り出す側の、「いってらっしゃい」
には、「どうか無事に帰ってきてください」
という祈りが込められています。

+++++     +++++     +++++

昔の日本では、旅に出ることは命懸けでした。

山賊、病、災害、水難事故…

今のようにスマホもなく、
簡単に連絡も取れない時代。

家を出た人が、二度と帰って来ないことも
珍しくありませんでした。

だから日本人は、「行ってきます」
という言葉に、「必ず帰る」
という強い意思を込めていたのです。

そして、その言葉が最も重くなった時代があります。

戦国時代。
第二次世界大戦。

戦へ向かう武士や兵士たちは、
「行ってきます」とは言えませんでした。

なぜなら、「帰ってきます」と
約束できない場所へ向かうからです。

+++++     +++++     +++++

だから彼らは、「行って参ります」「行きます」
そう言い残して家を出たと言われています。

送り出す家族もまた、「いってらっしゃい。」
とは言えませんでした。

駅のホーム、港、飛行場
母は涙をこらえ、妻は笑顔を作り、
子ども達は意味も分からず手を振る。

そして誰もが願いました。
「どうか生きて帰ってきてくれ」
それが叶わなかった人たちが、あまりにも多かった時代でした。

だから現代の私たちが交わせる

「行ってきます」
「いってらっしゃい」
「ただいま」
「お帰りなさい」

これは平和な時代だからこそ交わせる
“奇跡の言葉”なのかもしれません。

家を出る人がいる。
待っている人がいる。
帰ってくる場所がある。
迎えてくれる人がいる。

たったそれだけのことが、本当は当たり前ではない。

戦国時代の武士も、
戦地へ向かった若者達も、
誰より願ったこと。

それは、勝利でもなく、名誉でもなく、
「生きて帰ること」だったのかもしれません。

+++++     +++++     +++++

だから今日も少しだけ丁寧に伝えたい。

「行ってきます」
「いってらっしゃい」
「ただいま」
「お帰りなさい」

その言葉を交わせる今日という日は、
誰かが守り、誰かが願い、
誰かが帰れなかった先にある

平和の上に成り立つ日常。

そして、「帰る場所がある幸せ」を
思い出させてくれる言葉なのだと思います。

今日も誰かが、「行ってきます」
と言って家を出て、「ただいま」
と言って帰ってくる。

それはきっと、
私たちが思っている以上に、
尊くて、幸せなこと。

そう思うのです。

Post Author: akali

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